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年代別建物散策 〜麻布から〜 建てられた時代によって表情がちがう. designshopのある麻布界隈を歩いていて目に付くのは洋館やスティールサッシュの古い建物です. 実は南麻布にあるdesignshopのある白ビルも,(左官職人の診立てでは)築40年以上経ったものです. もともとは独のレンズメーカーでSONYのデジカメなどに使われている,あのカールツァイツが日本進出を機に建てたビルです.造ったのは日本人でも施主はドイツ人ということになります.だから敷地も道路の間口が広く,プロポーションが明解で,窓や階段の造りがよく,モダンでハンサムなビルです. 最近までこの南麻布2丁目の辺りは竹谷町といって軽金属加工の工場が多いエリアでした.ですから今でもこの付近には,昔の工場と住まいが合体したようなビルが散見されるのです.中には煉瓦造の小さな印刷工場も現役だったりします. 逆に洋館があるのは丘の上.その昔は武家の下屋敷が並んでいたのが麻布台や白金台です.その名残で今でも大使館や大きなマンションが多いのです.ステンドガラスを玄関ホールに掲げたあの正田邸のようなマンサード屋根の洋館がちらほら残っています.主に戦前,財を成した実業家達はとってもハイカラ趣味で自宅を数寄屋造りにはせず憧れの洋館建築を競って建てたのではないでしょうか. 昭和40年代以前の古いビルを探すなら,山の手の渋谷や新宿を探したって在りません.だって渋谷駅の次に西武デパートが古いんですから... 逆に,服飾職人の街だった御徒町や印刷の街として栄えてきた神楽坂の裏の辺りなど,往年の地場産業があったところには必ず趣のある古いビルが在ります.多分それぞれの建物にも,固有の記憶が宿っていてそれを分かってもらえる使い手を待っているのです.そんな古いビルを自分達なりに再生して街と一緒に新しく蘇らせることができたら,こんなすばらしいことはないと思います.それこそ『都市の記憶』を紡ぎ続ける『街の財産』と呼べるのではないでしょうか. 古さは四次元の味わいです.新しいものにこの空気感は出せません. |