自然には、色がある。木にも、花にも、それを育てる土にもまた、土地ごとに固有の色があるのだということを、知る。「土」の飾りは、日本、そして世界各地の土を採取し、その美しさを伝えている美術家・栗田宏一の作品に触れたことがきっかけとなって誕生しました。日本という国の繁栄の礎が築かれた、奈良の都。その土が、どんな色をしているのか、幾千年の歴史を越えて、私たちに何を訴えかけるのかを、この目にしてみたいと思ったのです。
若草山、吉野、明日香、月ヶ瀬、そして斑鳩。歴史に名高い各地の土を、探して歩きました。そして丁寧に乾燥させてガラス瓶に収め、名を冠した和紙を添え、麻苧をもって結び切りました。その原料もまた、土が育てた植物である和紙。漂白では得ることのできない、天然のほのかな白さが、細かな土の粒子ひとつひとつに、清らかな輝きを与えています。
遠い過去に思いを馳せながら、いまという時間を踏みしめて、生きる。その営みを静かに見つめる「土」の飾りです。 |