動じないこと。静かであること。その身に火を宿らせるものの、いまは静かな姿。かつて炭は、生活のための熱源として、当たり前のように暮らしの風景に存在していました。電気やガスにその座を譲ったいま、炭は、その組成に由来する吸着力などの見直しにより、エコロジカルな生活材として新たに注目を集めています。物質の燃焼という強いエネルギーを制御する力、またそのシンプルで美しい姿から、「火」の飾りのモチーフに選びました。茶道の炭手前にも使用される、丸ぎっちょと呼ばれる小ぶりの炭を、俵型に積んで、帯状の和紙で包みます。合わせ目である襲の部分には、赤色の「におい」と呼ばれる和紙を挟み込み、色を添えます。流れるような動きのあるデザインは、風にたなびく炎を思い起こさせます。 |