雪の白。雲の白。波の白。悠久の時の流れの中にけがれなく、永遠の清廉を保つただひとつの色。見る者を彼方に誘う、深い奥行きをたたえた色です。
白と白を取り合わせる。白に白を重ねる。白の向こうに白を置く。美濃和紙職人が手漉きした和紙の上に表された、濃淡二つの白の面積比は一対一。陰陽道に由来する日本の伝統紋・巴のように、ひとつの白がひとつのかたちを表すと同時に、もうひとつの白のかたちを浮き上がらせます。
和紙の白を受け止めるのは、奈良の清流に晒された生成の麻布。木と草、それぞれの出自もまた陰陽の対を成す日本古来の天然素材が、ひとつの平面に調和しています。終わりと始まり、その間にあるすべてのものを慈しむ。白の軸は、天と地、過去と未来、自然と人が対峙し、融合し、響きあう、小さな世界の姿です。 |