地に根ざし、天に向かう。「木」は、「気」の姿に通じます。紀伊半島の中央に位置する奈良県・十津川村の歴史は古く、史誌によると神武天皇の御代から始まるといわれています。渓谷からゆるやかに広がる豊潤な緑の大地には、多くの草花とともに、杉や檜の大樹が育ち、人々の営みを見守りながら、静かに年輪を重ねています。悠久の歴史を呼吸する、十津川の檜。まさに清廉の佇まいともいえるまっすぐな木目に、美濃楮でつくった生成の和紙を沿わせて折り、麻の繊維・麻苧で結んだのが「木」の飾りです。
陰陽道においては、上へ上へと伸びる木は「陽」に属するもの。そこで、伝統的な折形の「木の花包み」を踏まえ、天に向かう木の性質を、包みのフォルムで象徴的に表現し、同じく陽の包みにふさわしい、片わな結びで仕上げました。
眺めているだけで、自然と背筋が伸びる。おのずと居住まいを正したくなる。新しい年を清く、正直に生きるためにふさわしい、簡素で美しい正月飾りです。 |