天からあまねく降り注ぐ、恵みの雫。土に染み、清き水となって再び流れ出すところに、生命が、歴史が育まれます。奈良県吉野郡・天川村。世界遺産にも登録された霊峰・大峯山の伏流水は、万葉の昔より、修験道の行者たちが喉を潤した霊験あらたかな水として広くその名を知られています。
奈良の都の繁栄の源となったこの大峯山の水をこそ、来るべき年の若水に。そう考え、神聖な水にふさわしい容れものを用意しました。瓶の上に杯を重ねた器は、ガラス作家・辻和美のデザイン。天からの恵みを余すことなくその身に受け取れるように、との願いを表したかたちです。瓶の口元に施す折形に使用した和紙は、漉く段階で水滴をイメージした水玉の模様をつけたものです。飾る本体と折形の素材の呼応が、より深遠な水のイメージを喚起します。
潤いに満ちた年となりますように、と願いを込めて水を注ぎ、麻苧で結び切る。飾りは、祈る人の手を経て完成します。 |